読書会をはじめましょう

京都は鴨川の河川敷で、ドーナツをほおばりながら本を読んでいたコパルさんは、気が付いたらどういうわけか東京の端っこの多摩川沿いまで流されてきました。

この街のエレベーターで、電車の中で、ぎゅうぎゅう詰めにされて、エスカレーターで行列に呑みこまれて、上から降ってくる数字にずたずたにされているうちに、自分が自分ではなくなってゆく気がして、コパルさんはあらゆるものごとに嫌気がさしてきました。

 

京都での日々を恋しく、懐かしく思いました。あそこは空が広くて、鴨川のどの橋からも、北を向けばまっすぐに伸びた川の奥に、山々が連なるのが見え、その景色の中の空間の広がりが、ゆったりとした心持にさせてくれるのでした。

くわえて、あそこには、同じく本を愛する友人が沢山いたのでした。

そんな中、ある金曜日の夜に、広くて閑散とした本屋の椅子に腰かけ、ガルシア・マルケスのハードカヴァーを開いたとき、コパルさんは心からほっとしたのでした。心地よいジャズがひかえめに聞こえる静かな場所で、白熱灯に照らされ、テーブルの上に何冊もの本を積み上げて、そのうちの一冊のページを繰るとき、わたしはほんとうの自分に戻れるのだと。

本を読む。

それはひとりきりで、できること。ひとりきりだからこそ、できること。

そこには誰かの物語があり、誰かの思考がある。

ひとりだけど、ひとりじゃない。だから、コパルさんは、本を読むという営みに、tamagawa book clubという名前を付けました。仲間がいるみたいに聞こえるからです。

本を読んでいるとき、今ここにいる自分を取りまくあらゆるものから自由になれる。この不自由な現実を忘れて、自由な思考に心ゆくまで浸っていられる。これこそが、真の安らぎというもの。

ひとり、ここではないどこかへ、ふかく、深く、もぐってゆくこと。

それが、tamagawa book clubの主たる活動です。